まず、今回の「巻き戻し」裁定は、非常に特殊なものであり、一般のイベントでプレイヤーがミスした場合に適用されるべきでない、適用してはならないものであることを最初に明言しておきます。
そもそもマジックのトーナメントは、多くのスポーツや競技と同じように、ヘッド・ジャッジが誤らないことを前提としています。
しかし、誤審が起こってしまった。そこでやむを得ず執った、あくまでも超法規的措置なのです。
通常、ライブラリーまで含めたゲームの状態をもとに戻せない場合、責任のあるプレイヤーに【ゲームの敗北】を出してゲームを終わらせます。
しかし、今回の場合、責任はジャッジにあり、プレイヤーに罰を課すわけにはいきません。
となると、後は「どこで妥協するか」の問題になります。
今回、考えられる裁定は大きく分けて4つでしょう。
・そのままやり直しをしない
・両者優勝などの特別措置を取る
・マッチ/ゲーム自体をなかったものにしてやり直す
・誤審をしたところからやり直す
「そのままやり直しをしない」のが、通常のマジックのフローです。
しかし、誤審によって優勝者が決まったというのは、優勝者にとっても後味がよくないでしょう。
もちろん、マジック世界のためにもよくありません。
普通の選択肢ではあるが、良い選択肢ではない……私はそう考えます。
「両者優勝などの特別措置を取る」のは、一見いいアイデアに見えます。
しかし、この大会はDCIの認定する、世界選手権へと続く道の一部です。
当然、優勝者の数を増やすなどということはこの大会に許されている裁定の範疇外です。
それに、来年度の大会運営にも非常に大きな影響を残し、それによるミスも誘発しかねません。
もっともあり得ない裁定であると言って過言ではないでしょう。
「マッチ自体をなかったものにしてやり直す」のは、他の競技ではあり得る裁定です。
しかし、少なくともゲーム単位で切り分けることのできるマジックではする必要はないでしょう。
では、「ゲーム自体をなかったものにしてやり直す」のはどうでしょうか。
こちらは、マッチをやり直すよりは理解できるところでしょうが、誤審があった時点まで優勢だったプレイヤーが、相手を有利にする誤審で無効試合になったとすれば、そのプレイヤーにとっては最も納得のいかない裁定になります。
(FIFAがW杯アジア予選5位決定戦のウズベク−バーレーン戦でこの裁定をし、そしてウズベクがその再考を求めていることがその実例です)
また、万一悪意を持った審判がいたとしたら、故意に誤審を行なうことで、そのゲームをうやむやにできてしまいます。
そして、「誤審をしたところからやり直す」のが、今回取られた裁定です。
今回の場合ビデオがあったので、公開情報については完全に再現することができました。
そうでなくても、第三者の証言などからほぼ完全に再現することができるでしょう。
そして、ライブラリーは「判らない」部分は無作為化する。
これによって、次以降のドローを白紙に戻し、可能な限り公平にしたわけです。
今回の裁定がベストだとは思いません。
ベストは、もちろん「誤審をしないこと」です。
しかし、誤審をしてしまったことを踏まえてのリカバリーとしては、思い付くかぎりの最善のものだったのではないかと考えます。
今回はさまざまな要因が絡み合い、あってはならないミスが起こってしまいました。
二度とこのようなことを起こさないよう、ジャッジはさらに研鑽に励まなければなりません。
頑張りましょう。